ぼくたちはこの先どうやって生きていくのか?成熟した日本に必要な3つのシフト

こんにちは、sharela編集長のみどりです。

前回の記事では、現在の社会モデルの問題点について取り上げました。それでは、それらの問題に立ち向かうため、どのような社会をデザインしていくべきなのでしょうか?

リンダ・グラッドン著の『ワークシフト』の考え方をベースに、それぞれの領域がどのように変化していくべきかを見ていこうと思います。今後社会に起こるべき変化としては、「各領域のシフト」、「領域間の境界の曖昧化」が挙げられます。

今回は、各領域がどのようにシフトするのか見ていきましょう。

 

各領域のシフト

前回説明した戦後循環型モデルでは、「子供が学校で教育を受ける」、「父親が会社で働く」、「母親が家で育児・家事に携わる」と、3つの大きな領域が存在していました。新しい社会モデルでも、これら領域に近しい働きをする領域は存在します。しかし、従事する人、場所は大きく変化します。例えば、「一定年数勤めた大人が仕事を休んで、家にいながら新しい技術の習得に勤しむ」、「中学校を卒業したばかりの子供が自分で事業を立ち上げる」などが一般的になります。各領域は、以下のように変化します。

  • ゆるい共同体・強い共同体へのシフト
  • 教育から学びへのシフト
  • 仕事スタイルのシフト

さて、これらはどのようなシフトなのでしょうか?

 

ゆるい共同体・強い共同体へのシフト

新しい社会でも、もちろん家族はなくなりません。しかし、今までのような、家族が中心に存在し、そこに依存した仕組みからは脱却しなければなりません。単身で故郷を離れる人も増えつつあります。そこで、共同体・コミュニティが重要になってきます。深いつながりと信頼を持った強い共同体と、気軽に参加できて抜けられるゆるい共同体、2種類のコミュニティが存在することで安定した共同体が実現されます。

 

強い共同体

自己再生のコミュニティ

強い共同体として必要な要素のひとつが、自己再生のコミュニティです。これは、「何かにつまづいたり、傷付いたときに戻ってきて、次に挑戦するまで心を休めることができる場所」のことを言います。それは、その人にとって、家族かもしれませんし、親友かもしれません。強い信頼関係があり、いざというときに頼れる存在、頼ってきたときに助けてあげたくなる存在です。一緒に住んで長い時間を共に過ごすシェアハウスも、そういった場所になれるのではないかと考えています。

 

ポッセ

ポッセは、関心分野を共有する少人数の集団のことを言います。例えば、「スタートアップに興味があり、市場動向について語れる仲間」であったり、「クリエイターとして活動していくために、相談できたり共同で製作が行えたりする仲間」であったり、「研究開発で行き詰まったときに、助言を求められる相手」であったりと、「専門家」として深い意見交換や協力ができる仲間のことを言います。社会は、個人の力が強くなり、問題が複雑化する方向に進んでいます。そんな中では、信頼がおけ、お互いに協力し合えるポッセの存在は重要なものになりつつあります。ただ、同じような専門性を持った仲間を見つけるのは容易ではありません。最近増えている、専門を持った人が集まるコンセプト型シェアハウスがポッセを形作るきっかけになるのではと考えています。

 

ゆるい共同体

精神的セーフティーネット

何かに新しく挑戦をするためには、「もし失敗してもなんとかなる」と思えることが重要です。ひとつの会社に対して、人間関係も収入も依存している状況では、会社を辞めるという決断は大きな選択です。バイトをしながら月数万円で暮らせる居住環境、そこにいれば誰かがいるという安心感があれば、もう少し自由な選択肢が取れるようになるのではないでしょうか?リバ邸の掲げている「現代に駆け込み寺をつくる」というコンセプトは、まさに、「最悪失敗してもあそこにいけばなんとかやっていける」という安心感を作り上げるのにぴったりだと思います。

 

ビッグアイディアクラウド

ポッセが信頼を置ける少人数の集団だったのに対して、ビッグアイディアクラウドは、名前の通り、非常に大きな集団です。なんなら、相手の顔を知っている必要さえありません。何かをやろうとするときに、自分の専門分野外から助言をもらえる場のことを言います。最近では、何か特定の分野に対して、様々なバックグラウンドを持った人が集まるオンラインコミュニティなども頻繁に目にするようになりました。

今までのコミュニティは、家族・学校・会社を中心としていました。しかし、これからのコミュニティは、関係の深さ、目的、参加形態など、コミュニティごとに千差万別になります。コミュニティのメンバーは、元々の知り合いである必要もありません。最も重要なことは、「コミュニティのビジョンに共感し、同意した上で参加する」ということです。様々なコミュニティが存在する世の中では、コミュニティ関する情報を収集し、必要なときに必要なコミュニティに働きかける。自分に合った最適な組み合わせを取捨選択していく。という考えが重要になっていきます。

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教育から学びへのシフト

カリヨンツリー型のキャリア

今までは、「子供が学校で教育を受ける」という形が一般的でした。しかし、これからは、「必要なときに必要なだけ学ぶ」という考え方が一般的になっていくでしょう。変化のスピードは加速しており、高校、大学の7年間の学習では追いきれないほどの技術革新が日々起こっています。大学に入らず、働くことと、学ぶことを交互に繰り返しながら技術を身につけていく。『ワークシフト』の中では、「カリヨンツリー型のキャリア」として以下のように説明されています。

今後主流になるのは、いくつもの小さな釣り鐘が連なって職業人生を形作る「カリヨン・ツリー型」のキャリアだ。精力的に仕事に打ち込む期間と、長期休業して学業やボランティア活動に専念したり、仕事のペースを落として私生活を優先させたりする期間を交互に経験し、ジグザグ模様を描きながら仕事のエネルギーや技能を高めていくのだ。

この考えをベースにすると、「社会人になるために必要最低限の知識を身につける」という考え方では、今の時代に対応できなくなってきす。学びと仕事のバランスも、様々なパターンが考えられます。具体的には以下のようなものです。

  • 戦略的に高校・大学に行かないという選択肢が生まれる
  • 社会人であっても、学び直すために仕事を一時的に休職する
  • 半分仕事、半分学びに当てるというライフスタイル
  • アルバイトやインターンシップという形で働きながら、仕事に必要な技術を習得する

長期休業をするという選択肢はリスクが高すぎて選びにくいですが、ある程度収入を下げてでも学ぶという考え方は、新しい世の中での最適な戦略のひとつとなるでしょう。

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学習における金銭的コストの低下

仕事を辞めて、技術の習得に時間を当てるというと、「そりゃあお金があればできるけど」と、金銭面が気にかかるかもしれません。しかし、学習に対するコストは日に日に下がり続けています。私立の大学であれば、卒業までに500万円程度の学費がかかりますが、数十万円も出せば、同等の知識を身につけられるようになっています。

エンジニアになるための学習コストを考えてみましょう。質問にリアルタイムに答えてくれるオンライン講座のTECH ACADEMY、今までの学校のような形式で教えてくれるTECH::CAMPといった、1,2ヶ月の短期集中でエンジニアとしての一歩を踏み出すためのプログラムが存在します。特定のジャンルに絞った勉強会も開催されています。勉強会の参加者にはプロフェッショナルも参加しているので、その分野の最新分野の情報を教えてもらえます。プログラムに関する動画講座がかなり幅広いジャンルで揃っていて、無料で見ることができるドットインストールというサービスもあります。今のところエンジニアに関するサービスが多いように感じますが、schooであったり、レアジョブやDMM英会話といったオンライン英会話サービスであったりと、安価なオンラインの学習サービスも増えています。このようなサービスは今後も様々な分野で増えていくことでしょう。学習に関するコストが低くなれば、自分が生活できるだけの資金さえあれば学習に専念できるので、敷居が低くなります。

上記のように、新しく登場した学習方法を活用して連続的に学ぶことで、高い専門性と新しい技術に対する知見を持つことが最適な戦略となっていきます。なぜそのような変化をする必要があるのか?以下のような仕事スタイルのシフトに影響されているのです。

 

仕事スタイルのシフト

「会社に就職して、定年まで働く」という考え方は、もはや幻想でしかありません。そのような社会環境の中でどのように生き抜けばいいのでしょうか?目指すべき仕事のスタイルは、「スペシャリスト」、「ミニ起業家」、「ミニマリスト」の3種類が考えられます。

 

高い専門技術を身につけたスペシャリスト

今後の働き方としては、エンジニアリング、データ分析、ディレクション、マーケティング、会計、経営戦略、デザイン、動画制作など、多岐に渡りますが、専門性の高い技術を中心としたジョブ型の雇用が働き方の中心になってきます。

高い専門性を持てば、フリーランスとして、案件を受けながら生計を立てていくという選択肢も取れます。このスタイルでは、いかに市場価値が高いスキルを身につけ、評価されるかが重要になってきます。近い専門性を持ってお互いに仕事の紹介をしあう、ギルド的組織であったり、ある程度共通化した評価制度によって、仕事を獲得する必要があります。職種にもよりますが、ある一定の期間の契約や、週2、3日の契約、成果に対する報酬など、契約形態は比較的に自由が利きます。

 

新しい付加価値を生み出していくミニ起業家

ミニ起業家を目指すことです。商品の制作コスト、マーケティングコスト、販売コストは劇的に下がりました。その結果、会社に行きながらの週末起業、1年、2年程度気軽に会社をやってみるという選択肢も取れるようになりました。数多くの商品が出てきている現在では、需要も多様化しています。大企業が安価で高水準の商品を提供する一方で、小規模企業がその枠から外れた個別のニーズを満たすといった図式ができつつあります。「起業に失敗したら借金まみれで一家離散」、「人生を賭けた一世一代の大勝負」といったイメージを起業に対して持っている方もいるかと思います。しかし、「なんか儲かりそうだから、ちょっとやってみるかな」、「こういうの欲しいけど、なんでないんだろう?じゃあ作っちゃえ」くらいの軽いノリで始められるくらい選択肢になっているのです。

 

人生の価値や充実した生活を送ることにフォーカスしたミニマリスト

上記の2種類の生き方はどちらも、「生活に必要な費用をいかにして稼ぐか」という考え方に基づいています。最近では、「生活に必要なコストを最低限に抑え、自分の生活を充実を充実させることにフォーカスする」ということに重きを置く、「ミニマリスト」と呼ばれる人たちが現れつつあります。

生活コストを抑えると言っても、生活を切り詰めて貧しい生活を送っているわけではありません。低くなったコミュニケーションコストを活用し、最大限に情報収集をし、アクティブに行動することで、少ない収入でも充実した生活を送ることが可能なのです。ヒッチハイクをして移動し、現地の友人の家や、couch serfingなどのサービスを活用して宿を確保すれば、ほぼお金をかけずに旅行ができてしまいます。外食に行かず、必要以上に物を買わず、あまり使わないものは友達とシェアして活用する。そうやって、「本当に必要なものは何か?」という考えに基づいて行動するのです。シェアハウスに住む、SNSを活用する、ボランティア団体・NPOに参加するなどの方法で、コミュニティに参加すれば、社会的に孤立するこもありません。相対的貧困などが叫ばれる昨今ですが、生活水準は確実に上がっています。うまいことやれば、月10万円程度の収入と緊急時の蓄えさえあれば、十分に快適な生活が行えるのです。ミニマリストという考え方は、現在の息苦しい世の中を快適に過ごすパラダイムシフトかもしれません。

以上のように3つの領域は複雑化し、どのように学び、どのように働き、どのようなコミュニティに参加するのかを自分で真剣に検討しなければなりません。しかし、見方を考えれば、生き方を自由にデザインしていける世の中にシフトしていっているのです。

さて、次回は、これらの領域がどのように関わりあうのかについて執筆したいと思います。

次の記事 >> ワーク・ライフバランスから、ワーク・ライフインテグレーションへ〜曖昧化した世の中で生き抜くための3つの処方箋〜

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉