障がいの有無を超えた、支え合いのコミュニケーション~ぱれっとの家・いこっと

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恵比寿駅から徒歩8分、ぱれっとの家・いこっとに訪問しました。

ぱれっとの家・いこっととは?

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障害のある人もない人も安心して暮らせる家を」をコンセプトにしたシェアハウス。

知的障がい者の中でも、自立度の高い、身の回りのことは自分でできる方の自立支援を目的としています。

2010年4月にオープン、現在は30~50代の知的障がい者3名、健常者4名の計7名が入居中(全8室、現在1部屋入居者募集中)。知的障がい者を対象に、余暇活動支援や就労支援等を行う認定NPO法人ぱれっとが、オーナーより建物をサブリースし、運営を行っています。

 

コミュニケーションを通した家づくり

いこっとでは、コレクティブハウスの要素を取り入れ、共用設備(リビング・キッチン等)他に、各入居者が個室を持って生活しています。また、計画段階から、社会人ボランティアを中心に実行委員会を結成、ワークショップを通して家づくりを行ったとのこと。開設後は、実行委員会は運営委員会として運営サポートに回り、主な運営は入居者自身が担当。各入居者が係を分担し、月1回入居者ミーティングを開いて共同で暮らす上で困っていることを話し合ったり情報の共有をしたりと、コミュニケーションを通した家づくりの仕組みが整えられています。

今回は、開設後、日々暮らす中でのコミュニケーションを通した家づくりについて、NPOぱれっとの菅原さん(えびす・ぱれっとホーム施設長)と、入居者の方3名(石橋さん、渡辺さん、河原さん)にお話を伺いました。

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左から、入居者3名(河原さん、渡辺さん、石橋さん)、NPOぱれっとの菅原さん

オープンして初めてわかった、想定外の問題

開設前からいこっとの家づくりに関わってきた菅原さんは、開設当初の様子をこう振り返ります。

菅原さん:開設前の1年3ヶ月間、建築のプロを含む25名の実行委員メンバーと共に、いこっとのミッションや設備、家賃設定等、話し合いを重ねてきました。生活リズムや時間の違い等、生活上の問題も想定していましたが、開設して初めてわかった、想定外の問題にも直面しました。

1つは、基本的な生活力の問題。掃除や片付け、共有物の使い方等、基本的な生活力が身についていない人も少なくありません。自分だけでなく、次に使う人のことを考える、ものを大事にする、清潔に暮らす等、他人との共同生活の中で必要な気遣いの大切さを、入居者には伝えています。

2つ目は心の問題。共同生活の中で、メール等で他人を傷つける言動から、関係悪化へと問題が表面化することもありました。その都度、様々な形で話し合いを設けるなど、運営委員会も含めチームで対応しました。

 

いずれにしても、障がいの有無は関係なく見られた問題でした。過度な気遣いや思い込みで、気持ちを伝え合うことができなくなる人が多い。その場で伝えれば済む些細な出来事が、時間が経つことで大きな問題へと発展してしまう。人間関係が希薄と言われる今の社会が抱える問題なのだと感じます。

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いこっとでは、直接リビングで顔を合わせる時間を大切にしているとのこと。

 

直接相手に伝える勇気

知的に障がいのある石橋さんは、2010年10月入居。老舗の菓子メーカー・新宿中村屋勤務、いこっと内ではリーダーを務め、サポートを担う運営委員会での話し合い事項を入居者間で共有する役割等を担当。「入居当初は、不安で泣いていた」と話す石橋さんに、これまでの生活を振り返ってお話を伺いました。

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「いこっとへの入居をきっかけに、私の人生は変わった」と話す石橋さん。いこっとに住み始めてからピアノをはじめ、演奏会でピアノを披露したとのこと。(写真はいこっとブログより引用)

石橋さん:入居当初は、共同生活や家族と離れることへの不安がいっぱいで、話そうとすると泣いてしまうこともありました。でも、他の入居者が声をかけてくれて、少しずつ自然体で接することができるようになりました。

いこっとで生活する中で変わったことは、一つ屋根の下で暮らす中で、お互いのことを知り、いやなことがあったら、勇気を持って直接相手に伝えるようになったことです。最初は、菅原さんや私を知る人に相談していたんですが、「本当に伝えなきゃいけない相手は誰?」と返されて。徐々にその意味がわかってきて、「自分でちゃんと伝えなきゃ」と学びました。自分自身にとっても大きな成長でした。

 

「信頼関係とは何か?」の学び

知的に障がいのある渡辺さんは、「自立したい!」という強い想いを胸に、両親を説得して、2013年6月に入居。いこっとでは、イベント企画係を担当。「いこっとは協力することの勉強」と話す渡辺さんに、いこっとでの学びについてお伺いしました。

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渡辺さん。訪問当日には、笑顔でリビングを案内してくださった。

渡辺さん:入居当初、「信頼関係とは何か?」でずっと悩んでいました。例えば、どこに身を置いたらいいかわからず、階段の上り下りやドアの開け閉め等を繰り返して、他の入居者から注意されることがありました。注意された時に、何故注意をされるのかわからない…という状況だったんです。

入居3ヶ月を過ぎたころから、月1回、菅原さんと面談して「どういう時に信頼関係が崩れるのか、信頼関係で一番大切なことは何か?」等を話し合い、少しずつ人との信頼関係の築き方を学びました。

菅原さん:家の中での問題は、入居者間で解決してもらうのがベストですが、個別に悩み等がある場合には、話を聞いたり各入居者に合わせて相談にのっています。面談等を通して、入居者が落ち着いて暮らせるようになったら、やり取りは終了。何かあったら相談においで、と声をかけています。

 

時間はかかっても、分かり合えると信じて伝え続ける

河原さんは、2013年5月入居。障がい者スポーツを発信するメディア・パラスポ!の代表を務め、いこっと内では備品係を担当。「ぱれっとの新年会参加をきっかけに、入居を決めた」と話す河原さんに、お話をお伺いしました。

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河原さんの運営するサイト、パラスポ!Facebookページ

河原さん:いこっとのメンバーは、家族ではないけど、生活を共にする関係です。ただ、仕事や生活の時間が異なるため、一緒にいる時間は限られています。お互いに向き合って話すこと。私自身もその点は意識して、自分が感じたことはなるべくみんなに伝えようと思っています。

こちらが伝えたつもりでも、相手に伝わっていないこともあり、互いに理解をするのに時間がかかることもあります。でも、伝え続けていると必ず、分かり合うことにつながる。そう信じて、なかなかできない時もあるけれど、いつも人生の勉強だと思って、頑張っています。

 

編集後記:

リビングで顔を合わせる時間、直接面と向かって話すことを大切にしている、ぱれっとの家・いこっとのみなさん。

時に対立し、時に泣くこともありながらも、お互いに向き合って話すことを通して、信頼関係を築いてきたとのこと。障がいの有無を超えた、支え合いのコミュニケーションがあるのだと感じました。

ご協力いただいた、菅原さん、石橋さん、渡辺さん、河原さん、ありがとうございました!

 

※お問い合わせ先

下記のHPよりお問い合わせください。

ぱれっとの家・いこっと