「叶わない夢」のほうが多かった-獣医からアーティストへ転身〜Ouma〜TOLABL

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ー自己紹介をお願いします
Ouma: 細胞アーティストをやっているOuma(オーマ)です。もともとは獣医をやっていて、がん細胞の診断医になりたくて勉強していたのが、現在の「細胞」をモチーフとしたアート活動に繋がっています。活動を始めてから4年くらいになるでしょうか。亡くなった患者さんのご家族に、その子の絵を送っていたことがあり、獣医として「薬や手術によらない心の癒しの手段があるのではないか」と思ったのが、今の活動の核になっています。

とはいえ、アーティスト志望だったわけではなくて、獣医時代にはイラストを描いて自分でFlashアニメーションやミニゲームを作ったり、ワーキングホリデーでオーストラリアに行って、現地でWEBデザインの仕事をしたり、いろんなことをやっていました。この頃は特に、自分では「絶対これをやりたい!」みたいなものはなくて、どちらかというと、「叶わない夢」のほうがずっと多かったです。

中学生の頃、心から「これになりたい!」って思った職業は「編集者」でした。本を読むのが小さい頃から大好きだったんですよね。だけど高校1年の秋に廊下を歩いていたら急に「獣医になろう」と降ってきたみたいに思い立って、本当に獣医の大学に入ってしまった。それでも文章を書くのが好きで、自分で何かを書きたい、という思いがあったので、大学時代は童話のコンペにすごくたくさん応募していました。ネバーエンディングストーリーのようなファンタジーを書きたくって。それで300本くらい出したんですけど、結局全部落ちたんですよね。他にも絵本作家になりたかったり、細胞診断の専門医になりたかったり。でもなりたいと思ったものは全部うまくいかなくて。それに比べたら、アートについては賞をいただくことや企画展の機会をいただくこともあって、努力の割にはうまくいくことが多いな、という印象でした。そんなこともあって今は、「やりたい」ことより「うまくいくこと」をやろうと考えていますし、うまくいくことが自然にやりたいことにもなっていっている気がしています。

臨床医を辞めることにしてから、獣医だったという実績を買われて地球の歩き方のライターもやらせてもらったことがあるんですよね。東アフリカのタンザニアとモンゴルと。旅はすっごく過酷でしたが、その分、全く知らなかった世界に対する好奇心とか、見たこともない風景への憧れもあって、今はもっと世界中のいろんな町に行ってみたいと思うようになりました。世界の全ての国と地域に作品がある作家になるのが目標で、世界中でいろんな人と話がしてみたい、と思っています。

お金を稼いでいることとしては、アート、ライター以外にもクラウドファンディング研究家っていうのもやっていて。もう名乗ったもの勝ちな感じですけど、うちはクリエイターが集まるシェアハウスなので、自分のやりたいことだけで暮らしていく人が増えて欲しいな、という思いからセミナーなんかもやっています。

 

自分がやりたいことに対する熱量を伝えるのが大切

ークラウドファンディングで資金って集まるものなんですか?

 

Ouma: 本人にファンが多ければって感じですね。それか企画力がすごくよければ集まります。普通の人がサイトにプロジェクトを載せただけでは、人は集まらないです。

あと、クラウドファンディングは「資金集め」のツールだと思っている人が多いですが、私はそうは思ってないんです。簡単に言うと、「自分のやりたいことに対する熱量、情熱みたいなものをネット上でプレゼンするもの」だと思っています。単純にお金を集めたいというなら、バイトするか知り合いや投資家に頼んでまとめてもらったほうがよっぽど楽だし早い。それでもなぜ、プロジェクトとして立ち上げるかといえば、多くの人に自分の活動を知ってもらうことができ、それが自分の実績の1つになるっていう部分です。あるいはモノづくりなら、それが本当に使う人たちにとって欲しいものなのかどうかが、在庫を抱える前に分かる、テストマーケティングとして使える。そういう利点があるんですよね。

私が今まで関わったプロジェクトは4件、そのうち自分で立ち上げたのは2件ですが、起案したのが実績としてみられて、今の家賃0円シェアハウスに受かったというのはあると思いますし、それ以外にも展示機会や販売ルートの確保、制作依頼などに繋がったケースがあります。そういう予想外の機会獲得に繋がるというのは、このシステムのおもしろさだと思っています。大切なのは、自分が本当にやりたいことをやること。そのやりたいと思う情熱をしっかり伝えることかな、と。それはもうクラウドファンディングだけじゃなく、あらゆる夢に関してそうかなって思いますね。

 

ーライター業もやっているとお聞きしましたが、大変なことってありますか?

 

Ouma: 書くことが好きなので、楽しいことしかないですね。いろんな書き方を求められることで、文章のスキルが上がるのも好きだし、取材の時に今まで出会えない人にじっくり話を聞けるというのもすごく好きです。現在は自分のブログ3本とLife CLIPSやSTORYS.JPなんかにも気ままに投稿しています。 フリーでやっているので、自分という存在を知ってもらうっていうのは大事だと考えていますし、興味を持ってくれた人からコメントをいただいたりするのは活動の励みにもなっています。

 

毎日を予想外の中で生きている

ーシェアハウスに入ったきっかけを教えて頂けますか?

 

Ouma: ちょうど家を出なきゃいけないタイミングで家を探していたんです。大きな絵が描けるスペースがあって、日がよく当たる場所で、家賃0円だったらいいなーって。「そんなパトロンいないかな」なんて言っていたら、友達がこの「家賃0円クリエイターズシェアハウスTOLABL(トラブル)」を見つけてきてくれたんですね。

 

ー家賃0円シェアハウスの室内はどんな感じですか?

 

Ouma: 私の部屋は4階で出窓があって、実はうちの中で一番広い部屋です。日がいっぱい入って明るいのが何よりいいですね。出窓はすっかり粘土細工置きになってますけど、笑。あとは収納が多いので、たくさん持ち込んだ作品や画材がちゃんとしまえるのには本当に助かってます。普通のシェアハウスだと入らないですから。共有スペースとして和室やリビングもあって、内装もおしゃれなので、お客様を呼んでの打ち合わせにもよく使っています。1階にも広いスペースがあって、ここで制作もできますし、セミナーやイベントにも使えます。利用料は無料なので場所代の心配なく、なんでもチャレンジできるところがいいですよね。

 

ーシェアハウスに対して抵抗はなかったですか?

 

Ouma: 以前、女の子だけのシェアハウスに住んでいたこともあって、全然抵抗はなかったです。オーストラリアでワーホリをしていた時に初めてシェアを体験して。向こうだとシェアが普通なので。絶対に人となんて住めないって思ってたんですが、実際に住んでみるとシェアハウスの人との距離感がすごくいいな、と感じました。人はいるけどでもベタベタしてるわけでもなく、かといって孤独じゃない。その前に一人暮らしをしてたこともありましたが、シェアの心地よさも知ったことで、「暮らし方」に対する選択肢が増えたように思います。

 

ー今のシェアハウスに変わって、生活はどう変わりましたか?

 

Ouma: もう全然変わりました。前は3か月くらい先までは予測できる気がしたんですが、今はもう、1か月先の未来も予測できないです。昔はそういう不安定な感じが怖くて仕方なかったですが、今はその「予想のつかない感じ」を楽しめています。最近では、ご縁をいただいて浅草経済新聞のライターもやっているのですが、浅草に暮らす職人さんやものづくりに関わる人、飲食店やカフェのオーナー、フローリスト、紙芝居屋さん。いろんな人と直接会って話せるというのが本当に楽しい。その繋がりから、新しいことが一緒にできたらいいなって思っています。その土地の人と話して一緒に何かを作って、それを伝えていく。そういうの、世界中でやれたらいいなぁ。

 

普通に過ごしていたら絶対に出会わなかった人に出会えた

ー住んでいて嬉しかったことは何かありますか?

 

Ouma: 自分の知らない知識を豊富に持っているクリエイターが多いので、いろいろ助けられていますね。自分にはプロダクトデザインはできないし、ものづくりに対しても基本知識がない。「紙やすりでやればいいか」って思ったときに、「これを使うとやり使いやすいよ」って言って必要な道具を貸してくれたり、きれいに作るためのコツなど、ちょっとしたアドバイスをくれたり。

この前は個展で木を使ったのですが、ちょうど木材を持っている住人が居たんですね。正方形に切って欲しいといったら、びっくりするくらいきっちり測って正確に切ってくれました。機械を中心に扱っている人なので、普通に過ごしていたら絶対に出会わなかった人だと思います。あとは何より、作るものに対して非常に高い意識をもったメンバーが多いので、自分自身も「負けないくらいいいものを作りたい」と思えて、いい刺激になっています。

 

ーシェアメイトってどんな存在ですか?

 

Ouma: 私にとっては、家族でも友達でもなく、シェアメイトっていう存在だなって思います。家族であろうと友達であろうと仲間であろうと親友であろうと恋人であろうと、ラベルがどうあれ、こういう関係は変わらないので、なんでも好きに名付ければいいかなぁって思っています。シェアメイトって言っても、シェアメイトとの関係性って1つではないと思いますし。ラベルはなんであっても、大切な存在であり、私が一番影響を受けてる人たちであることは確かです。

 

ーシェアハウスに住んでからの心境の変化ってありましたか?

 

Ouma: いろんな物を手離してからここに来たので、いろいろやってみたいなって気持ちは増えましたね。振り返ってみれば家を出てからまだ1年経ってないんですけど、生活はめくるめくように変わってきています。ここに住み始める前は無名の人にすぎませんでしたが、TOLABLに住んでいたり、クラウドファンディングをやっていたりするのが影響しているのか、最近では「前よりは知られてきたのかも」って感じます。1年前より、やりたいことが明確になっていて、行動を起こしやすくなってきた気がしています。

 

TOLABLを踏み台にして世界へ羽ばたくことが恩返し

ー家賃0円とのことですが、運営会社のリレーションズさんはどういった思いでやっているのでしょうか?

 

Ouma: はじめはプロデューサーが単純に面白いから、と理由で始めたそうです。クリエイターを集めたら面白いことになるんじゃないかと。より面白いクリエイターを集めるには、もっと尖らせないと、ということで家賃0円にしたところ、101名が応募し、4人が住人として選ばれました。今年2月に住人が1人増えて、今は5人で住んでいます。

一応、名目上はTOLABLからいろんなプロジェクトが立ち上がって、そのうち2~3個でも話題になったものがあれば、運営会社のリレーションズのプロモーションにもなるだろう、という思いもあるようですが、リレーションズの代表にお会いした時に、「ここに関わって有名になったクリエイターさんが『TOLABLのおかげでここまでこられた』といった発言をしてくれたら、それだけで十分」とおっしゃっていて。リレーションズは「個人がすごくやりたいと思うことには価値がある。それを応援しよう」という社風があって、TOLABLでもそれが体現されている感じですね。住人といえど、半年以内に何をやらないといけないなどの義務はなく、何か収益を上げてもそのマージンを取られることはありません。

家賃0円というのが非常に珍しいので、新聞やテレビの取材を受けることもあって、これから出て行きたい人にはチャンスが多い環境ですね。プロデューサーさんも「TOLABLを使って自分がのし上がってやる」っていう思いが強い人を選んだって言ってたことがありました、笑。そういう意味で、ここを踏み台にして、自分がちゃんと世界に出て行けたら、恩返しにもなるのかな、と思います。

 

ーTOLABLには今後どのようになって欲しいですか?

 

Ouma: 続いて欲しいというのが一番の願いです。TOLABLって最低2年のプロジェクトということになっていて、2年の間の実績を踏まえて、続けるかどうかという判断をすることになっています。2年間の目標として、20プロジェクトを立ち上げるというものがあります。これからもっと多くの人が、TOLABLをきっかけにいろんなプロジェクトを立ち上げていき、ここが「日本で一番おもしろいものが生まれる場所。そういう人たちが集まる場所」みたいに認知されてくるといいですよね。自分はその一期目の住人として、その礎が作れたらいいな、とは思っています。そういう風にTOLABLがブランド化されていくことと、TOLABLをきっかけにしたクリエイターのネットワークが構築されて、何かあれば協力し合えるような環境になったら最高ですよね!

 

Ouma(オーマ)/細胞アーティスト・クラウドファンディング研究家

 

関連情報

シェアハウス名: TOLABL

年齢層: 20代後半〜30代前半

住人構成: 男性4人, 女性2人

最寄駅: 南千住

Webサイト: クリエイターズシェアハウスTOLABL